加藤 由紀VIEW PROFILE →
世界が東京に集う理由:ヒューマノイド市場の急成長と、日本が担う『ハブ』の役割
2026年、ヒューマノイド開発の世界的な視線が東京に集まっている。国際会議の開催、急拡大する市場規模、そして日本ならではの強みを落ち着いて整理する。
ロボットの現場を追いかけていると、二〇二六年の日本には特別な熱気があると感じる。国内での実用化が次々と進む一方で、ヒューマノイド開発をめぐる世界の視線が、いまはっきりと東京に向いているからだ。個々の導入事例ではなく、日本が業界全体の中心地として果たしつつある役割を、今回は少し引いた視点から落ち着いて整理してみたい。
東京に集まる世界の視線
その象徴が、五月二十八日と二十九日に高輪ゲートウェイの会議施設で開かれたヒューマノイドサミット東京である。世界中の開発者や投資家が一堂に会し、次の一歩を語り合った。六月には愛知のスカイエキスポでロボットテクノロジージャパンも開催された。豊富な技術者層と、人型の機械に対する文化的な親しみが、日本を業界のハブへと押し上げている。
市場規模が示す本気度
熱気の背景には具体的な数字がある。日本のヒューマノイドロボット市場は二〇二五年の約二・二億ドルから、二〇二六年には約二・九億ドルへと伸び、二〇三四年には約四十億ドルに達すると予測されている。年平均成長率にすると四十三・七パーセントという急勾配だ。深刻な人手不足と人口構造の変化が、この投資を強く後押ししている。
実証から普及への転換点
いま世界の業界が直面しているのは、試験導入から本格的な普及へという大きな転換である。話題づくりの実験で終わらせず、日々の業務を支える基盤として定着させられるかどうかが問われている。この点で、厳しい安全基準のもとで実運用の経験を積み重ねてきた日本は、他国にはない現場の知見という強みを持っていると私は考えている。
『一つの頭脳、多数の身体』という発想
技術の潮流も見逃せない。ある企業は「一つの頭脳、多数の身体」という考え方を掲げ、共通の基盤となる知能を、人型ロボットや四足歩行ロボット、産業用アームなど多様な機体で使い回す構想を示した。用途ごとに一から作り直すのではなく、頭脳を共有することで開発を速め、費用を抑える。これが普及の鍵になると期待されている。
私の見方
期待が高まる時ほど、私は足元を冷静に見るようにしている。市場予測はあくまで予測であり、技術が社会に受け入れられるかどうかは、価格や安全性、そして人々の納得によって決まる。それでも、世界が東京に集うこの状況は、日本にとって大きな好機に違いない。誇張せず、着実に成果を積み上げていく姿勢こそが問われていると感じている。






