加藤 由紀VIEW PROFILE →
2026年は「ヒューマノイド元年」、世界市場は8万台超へ急拡大し日本企業も開発を加速
ヒューマノイドロボットの世界市場が2026年に前年比約493%の8万台超へと急拡大する見通しです。中国が圧倒的なシェアを握るなか、トヨタや川崎重工、安川電機など日本企業も独自の人型ロボット開発を加速させ、製造業大国としての存在感を示しています。
人間の姿をした「ヒューマノイドロボット」が、いよいよ実用化の段階へと突入しつつあります。2025年から2026年にかけては、工場などへの本格導入が一気に加速する「ヒューマノイド元年」と位置づけられており、世界中の企業がこの新たな市場に向けて開発競争を繰り広げています。日本の製造業各社も、その大きな潮流のなかで独自の強みを発揮しようとしています。
世界市場の爆発的な拡大
矢野経済研究所の調査によると、ヒューマノイドロボットの世界市場は驚異的なスピードで拡大しています。メーカー出荷台数ベースで、2025年は前年比647.9%増の16,580台に達し、続く2026年にはさらに前年比492.7%増の81,690台へと急増する見通しです。わずか1年で台数が数倍に膨らむという、まさに市場の黎明期ならではの勢いを示しています。
この成長は一時的なものではなく、長期にわたって続くと予測されています。同研究所の試算では、世界の出荷台数は2035年におよそ718万台にまで達する見込みです。2025年から2035年までの年平均成長率、いわゆるCAGRは83.5%という極めて高い水準となっており、ヒューマノイドが今後の産業を支える基幹技術になる可能性を強く示唆しています。
市場拡大を後押しする要因として、大手企業による量産の開始が挙げられます。2026年には、米国のTesla、Figure AI、1X Technologiesといった企業が量産に乗り出すほか、中国企業の海外展開や米国での家庭用市場の立ち上がりが見込まれています。こうした複数の動きが重なり合うことで、市場全体が一気に活性化していくと考えられています。
圧倒的な中国、存在感を探る日本
地域別のシェアを見ると、現時点では中国の存在感が突出しています。2025年の地域別シェアでは、中国が実に84.8%を占めており、欧州が7.4%、米州が5.9%と続いています。中国では参入企業が200社以上に達しており、政府主導の産業育成政策が市場を強力にけん引していることが、この圧倒的なシェアの背景にあります。
一方で、産業用ロボットの分野で長年世界をリードしてきた日本の2025年のヒューマノイド出荷台数は84台にとどまっています。数字の上では中国に大きく水をあけられている形ですが、日本には既存の製造技術や現場のノウハウという確かな土台があります。この強みをいかに人型ロボットへと転換できるかが、今後の巻き返しの鍵を握っています。
日本企業の多彩な取り組み

実際に、日本国内では多くの企業が独自の人型ロボット開発に取り組んでいます。自動車大手のトヨタは、遠隔操作型のT-HR3や、バスケットボールをこなすAIロボットのCUEを手がけています。またソフトバンクロボティクスは、コミュニケーションロボットとして広く知られるPepperを世に送り出してきた実績を持っています。
重工業や電機の分野でも動きは活発です。川崎重工業はRHP KaleidoやRHP Friendsといった人型ロボットを開発しており、三菱電機は災害対応を想定したDiaroiDを手がけています。日立製作所は、高さ90センチメートルの受付ロボットEMIEW4を開発するなど、それぞれの得意分野を生かした製品づくりが進められています。
先進的な技術を持つ企業も目立ちます。THKが開発したFREDは、2025年に時速13.8キロメートルという速度を達成しました。また、160センチメートルの人型ロボットToroboを手がける東京ロボティクスは、2025年に安川電機の子会社となり、産業用ロボット大手との連携を強めるなど、業界再編の動きも生まれています。
さらに、ユニークな企業や新興勢力も次々と登場しています。ドーナッツロボティクスは価格1,800万円のcinnamon 1を、ugoは警備や受付向けのugo Proを展開しています。加えて、19の関節と生成AIを備えたハイランダーズのHL Humanや、2メートル級の遠隔操作重機を手がける人機一体など、多彩なプレイヤーが市場をにぎわせています。
日本が目指す独自の道
従来の産業用ロボットが特定の繰り返し作業に特化していたのに対し、ヒューマノイドは人間が設計した既存の環境や設備をそのまま活用できるという大きな強みを持っています。工場のレイアウトを大幅に変更することなく導入できるため、製造業が集積する日本にとっては、非常に相性の良い技術になると期待されています。
業界の連携も進んでおり、複数の企業が参加する産業コンソーシアムのKyoHAは、2026年に試作機を投入する計画を掲げています。出荷台数の面では中国が先行しているものの、確かな技術力と現場力を武器に、日本がこの成長市場で独自の地位を築けるかどうか、今後の展開に大きな注目が集まっています。





